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Room73  

2017.12.25

恋人の嘘に翻弄される

キャリアウーマン・由加利の部屋

監督 中江和仁

数々のCMを手がけながら、映画制作にも携わってきた中江和仁監督の長編デビュー作『嘘を愛する女』。ある新聞記事に着想を得て、およそ10年をかけ完成させたオリジナル脚本による、ラブミステリーだ。優秀なキャリアウーマンの由加利(長澤まさみ)と、そんな彼女に嘘をつき続けてきた恋人・桔平(高橋一生)。二人の危うい暮らしはどのように表現されたのだろうか? 緻密なキャラクター設定を組み立てた中江監督に訊いた。

恋人同士の“微妙なズレ”を感じさせる空間

主人公の由加利(長澤まさみ)は、一流企業に勤める完璧なキャリアウーマン。脚本段階で中江監督のイメージしていた設定では、彼女の住まいは東急東横線学芸大学駅から徒歩10分のマンションだった。
「由加利の年収は800万円、それで買えるマンションと考えると、古くて良い物件。例えばヴィンテージマンションの秀和レジデンスシリーズ(秀和が手掛けた分譲マンシンシリーズ)やビラ・シリーズ(興和商事が開発したデザイナーズマンションの先駆け)のような一室を、おしゃれにリノベーションしたというイメージでした。しかし、なかなかぴったりの場所が見つからず、また、演じる長澤まさみさんは身長が高いので、年季の入ったマンションだと小さくて画になったときのサイズ感がしっくりこなかった。最終的には、ベイエリアの高級マンションの一室をお借りすることになりました」
日頃の忙しさを癒すような、木のぬくもりとグリーンを感じるベッドルーム。

部屋は3LDKとひとり暮らしには少し広め。やがてそこに、研究医で面倒見のいい恋人・桔平(高橋一生)と一緒に暮らすことになる。
「このロケセットの決め手は、部屋数が多かったこと。ワンルームのズドンと広い部屋は“お金持ちの記号”としては良いのですが、今回は部屋越しに人物が見える構図が出来た方が面白いし、桔平のスペースもと考えると、分かれていた方がいろいろ工夫できるので、意図的にここを選びました」

「CMのお仕事でもご一緒したことがある」という天野竜哉さんによる装飾。中江監督のお気に入りは、木の形に合わせてはめ込んだガラスの花器。「天野さんは一風変わったものを飾る方なんですよ」。

桔平は、実は大きな嘘を抱えている。劇中では、桔平が由加利の家にいるシーンはわずかで、その中で二人の微妙な関係を表現しようと考えた。
「桔平は何かを背負っていて、由加利との間には微妙なズレがあるんです。ダイニングには丸いテーブルをおきましたが、食事のシーンでは、その端と端に座ることで微妙な距離をつくり、ちょっとした違和感を感じられるようにしています」
ダイニングには伸長式の丸テーブル。食事のときの二人が座るのはテーブルの端と端。料理は桔平の担当のため、その席はキッチン側に。

桔平は「自分の痕跡を残さないように生きてきた」ため、由加利の部屋にもほぼ自分のものは置いていない。彼のものと思しき品物は、医学書とマジンガーZのフィギュアのみ。
「懐かしいものにふと触れたとき、これなら持っていても許されるかなと思った唯一のものが、マジンガーZのフィギュア。だけど、自分が良いと認めたものしか飾りたくない由加利によって、棚の端っこに追いやられているんです(笑)」

インテリアはほぼ美術にまかせたという中江監督だが、唯一一緒に選んだのがリビングのカーテン。「大人っぽい雰囲気にしたくて、色にはこだわりました」。

数少ない桔平の持ち物。研究医という“嘘”のための医学書を
少しと、子供の頃から好きだったマジンガーZのフィギュア。

吉田鋼太郎さんが演じる探偵の海原の事務所にも強い思い入れがあったと振り返る中江監督。
「海原は、真面目なんだけどチャーミングでユニークな人物にしたいと思いました。このロケセットを選んだのは、斜めの窓があったから。そこをうまく活かせるんじゃないかと。ちょっと広すぎるかなとは思ったのですが、美術部が『このくらい広くても飾れます』と言ってくれたので、決めました。

海原は東京ヤクルトスワローズファンという設定なんです。装飾のスタッフにヤクルトファンがいて、優勝した時の記事を全部取ってあるというので、デスクまわりに貼ってあります。実際はあまり写ってないんですけどね(苦笑)」
もともと由加利のマンションだったため、あえてプライベートスペースは分けていない。化粧部屋のクローゼットは桔平の物置。ベッドルームにある由加利のクローゼットに比べると大分小さめ。劇中は登場しないが、ベランダには桔平がよく手入れしている植物も。

映像カルチャーマガジン・ピクトアップ#110(2018年2月号 12月18日発売) 『嘘を愛する女』の美術について、監督の中江さんのインタビューを掲載。
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プロフィール

中江和仁

nakae kazuhito
81年滋賀県生まれ。武蔵野美術大学卒業後、サン・アドに所属し、CMディレクターとしてゆうちょ銀行、資生堂シーブリーズ、サントリーのオールフリーやサントリーウーロン茶など様々な広告を手がける傍ら、映画制作をスタート。05年『single』がPFF観客賞受賞を受賞。以降、『STRING PHONE』(08)、『蒼い手』(11)、『パーマネント ランド』(12)と作品を重ね、海外の映画祭でも高い評価を受ける。
ムービー

『嘘を愛する女』

監督/中江和仁 脚本/中江和仁 近藤希実 美術/林チナ 出演/長澤まさみ 高橋一生 ほか 配給/東宝 (18/日本/118min) 完璧なキャリアウーマンの由加利のもとに、ある夜、突然警察が訪ねてくる。同棲している恋人・桔平がくも膜下出血で意識を失って倒れたのだ。そこで明かされたのは、彼の職業はおろか名前すらも嘘という事実だった……。騙されていたショックと拭えないまま、疑問を明かすべく、由加利は桔平の過去を追うことを決意する。18年1/20~全国東宝系にて公開 ©2018「嘘を愛する女」製作委員会
『嘘を愛する女』公式HP
http://usoai.jp
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