Room07  

2012.9.3

鍵泥棒・桜井と殺し屋・コンドウの両極端な個性が生きる住まい

ヴィンテージ!? 味がある? 売れない役者 桜井の部屋

美術監督 金勝浩一

『運命じゃない人』『アフタースクール』と、痛快なトリックを軸にした作品を発表してきた内田けんじ監督。そんな監督の最新作『鍵泥棒のメソッド』は、2人の男が入れ替わって巻き起こる喜劇を描く、爽快感あふれるエンターテインメント。堺雅人演じる売れない役者・桜井と、香川照之演じる伝説の殺し屋・コンドウ。対照的な2人の部屋をつくりだしたポイントを美術監督の金勝浩一さんに語ってもらいました。
text by 釣木文恵

「人生の入れ替わり」が仕掛ける驚きのビフォーアフター

桜井のアパートは、谷中あたりの下町にある設定でした。そんな雰囲気があるロケ地のアパートの外観に合わせてセットを組みました。しかし、そこが撮影前に取り壊されることになってしまったんです。急遽、上大岡にある賃貸アパートの外観をロケ地に変更して、そこに合わせてセットの間取りを修正することに。

台東区谷中あたりの下町っぽい雰囲気を意識したイメージボード(左下)。実際は神奈川県の上大岡にあるアパートを借りて撮影された。トタンでできた屋根と外壁のさびれ具合が桜井の生活感を表している。映画の中のキーとなるポスト周りはセットで、後から付けられたもの。

玄関の位置が、前のところと逆だったので、部屋へ入るとすぐに畳の部屋、奥に台所という少し変わった間取りになっています。でも広末涼子さん演じる香苗が玄関のドアから顔を覗かせるところや同じアパートの住人の飼い猫が迷い込むシーンなど、この間取りだから雰囲気が出たなと思うシーンもあります。

妙に古くささを醸し出すチェック柄のカーテンは手づくり。金勝さんいわく「こういう柄ってなかなかないんです。けっこう探しました」。撮影所中からガラクタを集め、とにかく量で攻めて散らかっている感じを出した。柄モノだった畳のへりを黒の無地に貼り替えて、よりいっそう貧乏らしさを演出。

コンドウは転倒して記憶喪失になり、自分が桜井だと信じ込んでこの桜井の部屋に住みはじめます。もともと綺麗好きのコンドウは次第に部屋を片付けていくんです。本物の桜井はどこもかしこも散らかしっぱなしで台所は立ち入れないほどでした。それを玄関から反時計回りに棚、台所、そして最後に押し入れと、シーンごとに少しずつきれいにしていきました。
押し入れに詰め込みっぱなしの荷物がダンボールの棚に整理され、最後は外してあった押し入れの戸がはまる。その経過を楽しんでほしいです。整理するポイントは床から。足の踏み場を確保して、それから場所ごとに順番に片付けていくと、散らかった部屋も見違えるようになるはずです。

物語が進むにつれ、コンドウによって次第に片付けられていく桜井の部屋。片付き度合いは押し入れに注目しているとわかりやすい。散らかっていた頃に比べると格段に広く見えるのは、とにかく床にモノが置かれていないから!

4.5畳の1DK。畳の部屋とDKの境の戸を取り払って、広くゆとりある使い方をしている。
映像カルチャーマガジン・ピクトアップ#78(2012年10月号 8月18日発売)
『鍵泥棒のメソッド』の美術について、金勝さんのインタビューを掲載
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プロフィール

金勝浩一

kanekatsu koichi
東京都生まれ。横浜放送映画専門学院(現・日本映画大学)を卒業後、『トカレフ』(94)で美術監督としてデビュー。おもな近作に『ちょんまげぷりん』(10)、『一枚のハガキ』(11)、『麒麟の翼』(12)など。内田監督の前作『アフタースクール』(08)も手掛けた。
ムービー

『鍵泥棒のメソッド』

監督・脚本/内田けんじ 出演/堺雅人 香川照之 広末涼子 荒川良々 森口瑤子 配給/クロックワークス(12/日本/128min) 35歳で売れない役者を続けている桜井(堺)は、自殺にさえ失敗する始末。銭湯で出会った金持ちそうな男、コンドウ(香川)が目の前で転倒し、気を失ったのをいいことにコンドウに成りすますが、実は彼は殺し屋で……。 9/15~全国公開 ©2012『鍵泥棒のメソッド』製作委員会
『鍵泥棒のメソッド』公式HP
https://twitter.com/kagidoro_movie
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