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Room66  

2017.5.19

宇宙人に“覚醒”する

大杉一家の一軒家

美術監督 安宅紀史

三島由紀夫の異色のSF小説を、映画として再び現代に“覚醒”させたのは、『桐島、部活やめるってよ』『紙の月』で知られる監督・吉田大八。原作を現代劇にアレンジした大胆な脚色には、美術監督の安宅紀史さんも驚いたと語る。父は火星人、長男は水星人、娘は金星人――次々と覚醒していく「宇宙人家族」。その住まいはどのように形づくられていったのだろうか?

キャラクターの居場所に感じる、家族間の気まずさ

主人公の大杉重一郎(リリー・フランキー)が家族と暮らす家は、もともと重一郎の両親が高齢になってから建てた設定で、築年数は20〜30年ほど。重一郎の職業はテレビ気象予報士で、中流家庭より少し経済的に余裕のある家だ。
「三島由紀夫の原作では旧家の立派な家だったと思いますが、吉田監督の中には和風の家のイメージはなかったようです。当初、立地は国立あたりじゃないかという話もありましたが、吉田監督は明確な土地感や地域性を出したがらないので、割と“東京にある普遍的な家”にしようとロケハンを始めました」

安宅さんがロケセットに手を加えた部分は、ダイニングとリ
ビングの間にある間仕切り。「間仕切りがアクセントになっ
て空間の仕切り感が出て、カメラのアングルもいろいろ探れ
るんじゃないかと思い、提案しました」

「あまり豪邸過ぎてもイメージに合わない。リビング、ダイニングはもちろん、長女の暁子(橋本愛)の部屋の撮影が一軒で出来るところというのも条件のひとつでした。長男の一雄(亀梨和也)は、ほとんど家に寄り付かないで友達の家を泊まり歩いているのですが、その彼の部屋もあるだろうと想像できるような広さです」

重一郎が読み漁る超常現象の本は、使用許可をとったものと
オリジナルでつくったものを用意。「いろいろ用意しました
が、劇中では家族は誰もそこに触れてくれない(笑)。その
家族内での無関心さも、吉田監督が意図した表現のひとつだ
と思います」

余暇を楽しむくらいの余裕はある大杉家だが、今では一家団らんの時間も持てなくなっていた。冷めきった家族関係は、室内の端々に感じ取れる。たとえば、リビングにある大きなからし色のソファ。かつては家族みんなで集まっただろうこのソファのそばには、「重一郎が通販で買った回転座椅子」が置いてある。

「リビングにいながらも重一郎がひとりでこもれる場所として、この座椅子を置きました。少し違和感を感じられるように、椅子の色も変えています。原作では家の中に書斎もあったと思いますが、部屋が分かれてしまうとそこに落ち着いてしまう。妻の伊余子(中嶋朋子)と同じ空間にいるのに、どこか居場所がない、そんな気まずさを感じられるようにしたかったんです」

暁子が子どもの頃弾いていたピアノにはうっすら埃が被っている。「家具は専業主婦の伊余子が頑張ってあつらえた、言い方は悪いですが“そんなに趣味のよくない”感じにしました」

吉田監督作品への参加は『紙の月』に続き2回目となる安宅さん。「監督とお仕事するときは、リアルなバランスの崩し方を考えさせられる」という。 「大杉家をつくるときも、『普通でいい。平凡な、つまらない感じで』とおっしゃる。これが結構難しいんです(苦笑)。『どういうことだろう?』といろいろ考えた結果、飾りとして逆に狙いを出さないのが狙いなのだろうと」

母の伊余子がネットワークビジネスにはまり、家に大量に届
いた「美しい水」。業者に頼んだという特注品で、もちろん
ダンボールもオリジナル。これも、家族が「宇宙人に覚醒す
る」予兆を感じさせるアイテム。

その「狙いを出さない狙い」は、たとえば暁子の部屋の飾りに現れている。母・伊余子は、決してだらしなくはないのだが、生活を重ねる中でリビングダイニングはいつの間にかごちゃごちゃした空間に。そんな母に反発する気持ちもあり、美しいものに惹かれる暁子の性格に鑑みて、最初は「本もジャンルごとに並んでいるような、整然とした部屋にした」という。 「しかし、その部屋を見た吉田監督が『もうちょっと、リアルな女の子の生活感があってもいい。やっぱり親子だから、どこかでお母さんと似たところが出てしまうと思う』とおっしゃったんです。そこで、きれいな配置や統一感をあえて少し崩し、人物の生活導線を考えながら、やり過ぎないようバランスに気を配って飾り変えていきました」

「金星人」に覚醒する娘・暁子の部屋。「ちょっとエキセントリックな女の子ですが、それはあまり美術では強調しすぎないように。ただ、キャラクターを考えて、女の子っぽい配色はしないようにしました」

家族4人暮らしにしては、ちょっと広めの一軒家。洗面台がふたつあるのも特徴的。2階には実際撮影した暁子の部屋をはじめ、それぞれのプライベートスペースもある設定。

映像カルチャーマガジン・ピクトアップ#106(2017年6月号 4月18日発売)
『美しい星』の美術について、安宅さんのインタビューを掲載。
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プロフィール

安宅紀史

ataka norifumi
71年石川県生まれ。99年『月光の囁き』で美術監督デビュー。代表作に、『南極料理人』(09)、『ノルウェイの森』(10)、『マイ・バック・ページ』(11)、『横道世之介』(13)、『女が眠る時』(15)など。近作に『クリーピー 偽りの隣人』『ふきげんな過去』『聖の青春』(すべて16)、公開待機作に、『PARKS パークス』(4/22公開)、『散歩する侵略者』(9/9公開)がある。
ムービー

「美しい星」

監督/吉田大八 原作/三島由紀夫 出演/リリー・フランキー 亀梨和也 橋本愛 中嶋朋子 ほか 配給/GAGA (17/日本/127min) “当たらない”気象予報士の父・重一郎。専業主婦の母・伊余子に、フリーターの長男・一雄と女子大生の暁子。東京で暮らす平凡な家族は、ある日突然、宇宙人として覚醒する。美しい星・地球を救うため、それぞれの使命を果たすべく行動を起こすのだが……。5/26〜全国公開 ©2017「美しい星」製作委員会
「美しい星」公式HP
http://gaga.ne.jp/hoshi/
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