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Room61  

2016.12.22

27年ぶりにふたりきりになった

宮本夫妻が暮らす中古住宅

美術監督 金勝浩一

『家政婦のミタ』『〇〇妻』『はじめまして、愛しています。』をはじめ、数々の話題のドラマを手がけてきた脚本家・遊川和彦。阿部寛、天海祐希を主演に迎え、自らの脚本で初監督に挑んだのが『恋妻家宮本』(こいさいかみやもと)だ。子育てが終わり、27年ぶりにふたりきりになってしまった50代夫婦の戸惑いを、コミカルに、また、暖かく描き出す本作。美術監督の金勝浩一さんは宮本夫婦の生活をどのように表現したのか?

壊れかけても修復しながら寄り添う、夫婦のような家

宮本夫婦が暮らす一軒家が建つのは東京郊外、多摩市あたりの設定。ふたりは子どもができ、大学卒業後すぐに結婚。中学校教師の職に就き、息子を育てながら堅実に生きてきた宮本陽平(阿部寛)は、専業主婦となった妻の美代子(天海祐希)とともに平穏な生活を送っていた。
「宮本夫妻が暮らす家は、結婚した当初、陽平が頑張って買った建売物件という設定です。映画準備の最初は、ロケハンでイメージの家をあちこち見たり、中古物件のチラシで間取りなどを参考にしたりしながら、遊川和彦監督と一緒に、具体的なイメージとお芝居の構成を固めていきました」

「そろそろリフォームを考えている家」らしく、壁紙にはち
ょっと剥がれかけているところがあったり、階段の手すりが
ぐらついていてクラフトテープで応急処置をした跡も。

「家の中は、1階と2階に分けてセットをつくりました。陽平は若い頃から子供がいましたので、堅実で質素な公務員勤めの暮らしを表現したかったのですが、阿部さんと天海さんがセットに立つと、格好がいいですから! 素材がいいのは大変です(笑)。どうしても『格好いい絵になって』しまう。その画の力に押されないように、美術セットは見た目のセンスのよさをより抑えて表現し、その場に自然に溶け込むよう心がけました」
年月の経過を出すため、リビングやダイニングキッチンは、「美代子がちょっとずつ自力でリフォーム」した設定に。そんな様子をかもし出すため、「全体的に“チープさ”と“ちぐはぐさ”を織り交ぜた」のだという。

陽平が廊下からキッチンを覗くシーンは、「味噌汁をつくる妻の背中を見せたい」という遊川監督の要望で、壁側にシンクを配置。リビングの夫に背を向ける形になるこのキッチンも夫婦関係を表現しているよう。

「面白い画づくりが出来るだろう」と、キッチンには床下収
納も。「伊丹十三作品みたいに、床下から撮ったりしないか
な?と思ったけど、残念ながらそういう活用の仕方はされま
せんでした(笑)」。

陽平は中学校教師のため、ファックス付き電話機の周りにはクラスの連絡網が貼ってある。アコーディオンカーテンを低めにつけたのは、「身長の高い阿部寛さんがわざわざカーテンの棒を屈めて避けるという芝居を織り交ぜられるように」。

「美代子は興味のあるものにいろいろ手を出しては飽きてしまうタイプ。引っ越した当初はガーデニングもやっていたけど今はほったらかしに近い。リビングのカーテンボックスの上に置いてある絵皿や健康器具なんかも、通販で買って飾ってみたけどそのままにしている。ただし、高いものを新調することはしないだろうから、電化製品などは結婚当時のものをずっと使っているように見せるため、中古品を飾りました」

国語教師で、もともと小説家を目指していた陽平。「寝室には壁一面を大きな本棚にして、古い日本文学の本を中心に多くの書籍を並べました」。

「地味にしてほしい」という監督の要望から、オリジナルデ
ザインでつくった「暗夜行路」の装丁。

一方、夫の陽平は料理に凝り始めて、料理教室にも通っている。「キッチンには、陽平専用の引き出しも用意しました。新しい家電が少し置いてあるのは陽平が買って来たもの。夫は自分の趣味を兼ねて……、それが妻は面白くないわけです(笑)」。 成長した息子は、ある日結婚を決めて実家を出る。結婚して27年、久しぶりにふたりきりになった夫婦の間には戸惑いの空気が流れる……。

リビングの吉田拓郎のCDや、息子の部屋のブルース・スプリングスティーンのポスターなど、監督自らが飾った部分も

「コツコツお金をため堅実な生活をしながら、ローンを払い終え、そろそろ家のリフォームをしようと妻は言います。家が壊れかけても、リフォームして直していく。この家の状態は夫妻関係とリンクしていると、監督もおっしゃっていました。ファミリーレストランのセットも含め年代を重ねて全体的には暖かい色合いにしているですが、夫婦の寝室だけは青いベッドカバーを敷いたりして、ちょっと寒色を入れています。ここで、陽平は離婚届を発見し、被害妄想をしたりする。『ちょっと2階には行きたくないな』という空気を出したかったのです」

離婚届を手に被害妄想をして落ち込む陽平のもとに、パックをつけた奥さんが現れるシーンは金勝さんが悩んだポイント。「オカルトっぽく後ろから現れるのか、横からすっと入ってくるのか……、印象的な画をつくるため、間取りは悩みました」

「通常セットは撮影のために少し広めにつくりますが、監督の「狭くしたい」と言う要望もあったので、微妙な寸法にした」という間取り。小さいながらも、家族3人それぞれの空間があり、暮らしやすそう。

映像カルチャーマガジン・ピクトアップ#104(2017年2月号 12月18日発売)
『恋妻家宮本(こいさいかみやもと)』の美術について、金勝さんのインタビューを掲載。
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プロフィール

金勝浩一

kanekatsu koichi
東京都生まれ。横浜放送映画専門学院(現・日本映画大学)卒業。『トカレフ』(94)で美術監督としてデビュー以降、数多くの映画を手がける。近作に『ボクの妻と結婚してください。』(16)、2017年も『島々清しゃ(しまじまかいしゃ)』(1/21)、『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』(3月)、『ひるなかの流星』(3/24)など公開待機作が多数控えている。
ムービー

『恋妻家宮本』

(こいさいかみやもと)
監督・脚本/遊川和彦 原作/重松清「ファミレス」上下(角川文庫刊) 出演/阿部寛 天海祐希 ほか 配給/東宝 (17/日本/117min) 大学卒業後できちゃった結婚をした陽平(阿部)と美代子(天海)だが、平穏な生活を経て息子もとうとう所帯をもつことに。息子が実家をでた夜、27年ぶりにふたりきりなり、なんだか居心地が悪い。そんなとき、陽平は寝室の本棚で美代子が書いた離婚届を発見する。 2017年1/28〜全国東宝系にて公開 (C)2017『恋妻家宮本』製作委員会
『恋妻家宮本』公式HP
http://www.koisaika.jp/
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