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Room58  

2016.9.9

千葉・東京・沖縄の3つの町に訪れた

素性の知れない男との暮らし

美術監督 都築雄二

『悪人』で、日本アカデミー賞をはじめ数々の映画賞を総なめにした、原作・吉田修一と監督・脚本の李相日。このタッグが放つ新たな傑作が『怒り』だ。ある殺人事件の一年後、犯人と思しき男が3つの町に現れる。私が愛した人は殺人犯かもしれない――そんな疑念が渦巻くヒューマンミステリーで、李作品の世界観を具現化したのは、美術監督の都築雄二さん。自身が「最高に楽しかった」と振り返る、容易ではなかったその創作過程とは?

李相日の求める世界にたどり着くために

映画の舞台となるのは、千葉、東京、沖縄の3つの町。それぞれの物語を結びつけるのは、殺人犯と思しき謎の男への疑念だ。
この3つの舞台をつくるにあたり、美術監督の都築さんは、坂原文子さん(『SUNTORY DAKARA』『カンロ ピュレグミ』CMなどで知られるプロダクションデザイナー)を呼び、新たなつくり方にトライしたという。 「監督の李相日さんは、とにかくいろんなアプローチを試みる方。ロケハン前にどんなにイメージをつくっても現場ではどうなるかわからない。ですから、最初にふたりでそれぞれデザインを描いて、交換して見せ合い方向性を定めながら、そのイメージを持ってロケハンに行く。そして最終的に決まったロケ地に、その中から使えるものを当てはめていくという、ひと手間加えたやり方をやってみました」
都築さんが「心情を重ねやすかった」というのは、東京で偶然出会い、体の関係でつながっていく優馬(妻夫木)と直人(綾野)のストーリーだ。李相日作品では初のスタジオセットで建てられたのが、ふたりが共に暮らすようになるマンションの一室。
「洋風の部屋というよりも、街が見える四角い箱」のような場所をイメージした。 「具体的な立地でいうと、恵比寿を想定しています。体は許しているけど、心は許していない関係性を、室内にいるふたりの距離感で表現できるように広さや間取りを考えました」

デスク回りやキッチン、玄関など、ものが増えそうな場所も
すっきりと整理整頓されている。その様子から優馬の几帳面
な性格が伺える。

時間をともにすることで、関係を深めているようにも見えたふたりだったが、やがて優馬は直人の不審な行動を疑い始める。
「もうひとつ意識したのは光です。明るいキッチンから暗いリビングに光が漏れている、という風に、光と影が交互にある空間(※1)を表現しました。優馬の心に生まれた迷いや疑念のように、影を落としたかったんです」

(※1)光と影を交互に作られた優馬の部屋

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都築さんが一番つくりたかったという真っ白なキッチン。人物の顔に影がかからないように、低い位置に付けたキッチンの吊り棚。室内の随所に表現された「光と影」はふたりの関係の危うさを象徴している。

都市の雰囲気を出すために夜景が見える部屋にしたかったこ
とも、セットにした理由のひとつなのだそう。

都築さんが「一番キツかった」と笑いながら振り返るのは、沖縄のロケ撮影。バックパッカーの田中(森山未來)が住みつく、無人島の廃墟をつくることだった。
「ロケハンでは息ができないくらいヘエヘエ言いながら(笑)、沖縄の無人島、50島すべてを一周しました。たまに僕だけ遅れちゃうと、李さんは先に行ってはそこで待っていてくれる。先に着いたらそこが良かったときだけ呼んでくれたらいいのにと思うけど、これはどちらが決めるという問題ではなく、『全島一緒に見ることが大事だから、見ましょう』と。厳しい方でしょう(笑)?」
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泉(広瀬すず)や辰哉(佐久本宝)が田中とお茶を飲んだりするテラスはもともとあった廃墟の部分。その奥の田中の寝床スペースは美術によって新しく足された部分。実際撮影していたスタッフも既存の部分との違いは判別できなかったと言うほどリアルに馴染んでいる。

納得がいくまでロケハンを繰り返して見つけた無人島には、廃墟となった海水浴用のレジャー施設があった。その建物を生かし、一部を壊したり、足したりしながらロケセットを完成させたという。 「実際にあるものに手を加えていくので、平面のデザイン画だと具体的に芝居がイメージしづらい。立体的な芝居の空間を考えるために模型もつくりました。結果的には、更地に新しく建てるよりも、しっくりいったんじゃないかなと思います」

田中を演じた森山未來は、撮影前からひとりこの廃墟で暮らして役作りに没頭したそう。「装飾には、実際森山くんが暮らしながら使っていたものや、島で拾ってきたものを飾っています」。

「比較的すんなりと決まった」のは、漁協で働く父・洋平(渡辺謙)と家出をした娘・愛子(宮﨑あおい)の暮らす町だ。「もちろん、千葉県の海沿いを一周してすべて見て回り、それだけでは足りず、伊豆まで足を延ばしました(笑)」。 「洋平の家は、頼み込んで実際住んでいらっしゃる方がいる家で撮影させていただきました。玄関や中も改装して、暮らしや町の人との関わりが、洋平に近い近所に住む方のお部屋をモデルにして飾りこみました」

1LDKの室内は、都会の真ん中にありながら、どこか閉じたような印象の空間。3つ並んだ部屋は「振り向いたら、どこに行ったかな?と思うくらいの距離感をつくれるように設計しました」。

映像カルチャーマガジン・ピクトアップ#102(2016年10月号 8月18日発売)
『怒り。』の美術について、都築さんのインタビューを掲載。
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プロフィール

都築雄二

tsuzuki yuji
62年愛知県生まれ。96年に『月とキャベツ』で美術監督デビュー。近作に『セイジ 陸の魚』『宇宙兄弟』(ともに12)、『謝罪の王様』(13)、『バクマン。』(15)など。また、ほとんどの石井克人監督作に参加しており、「ガメラ」生誕50周年記念映像『GAMERA』にも携わる。『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』は17年公開予定。
ムービー

『怒り』

監督・脚本/李相日 原作/吉田修一 出演/渡辺謙 森山未來 松山ケンイチ 綾野剛 広瀬すず 宮﨑あおい 妻夫木聡 ほか 配給/東宝 (16/日本/142min) 八王子で起こった夫婦殺人事件。顔を整形し逃亡した犯人は行方知れずのままだ。事件から一年後、千葉、東京、沖縄のそれぞれの町に、素性の知れない3人の男が現れる。その顔は、警察が公開した指名手配写真に酷似していた。9/17〜全国東宝系にて公開 ©2016映画「怒り」製作委員会
『怒り』公式HP
http://www.ikari-movie.com/
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