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Room56  

2016.7.22

近未来と様式美を融合

秘密を明らかにする“第九”の舞台

美術監督 橋本創

清水玲子の原作漫画を、大友啓史監督が5年の歳月をかけて映画化した『秘密 THE TOP SECRET』。人の脳に残った記憶を映像化し、それをもとに犯人を探し出す。神の領域に踏み込む倫理的な問題を抱え、凶悪犯の記憶を追体験することで精神を侵される危険な「MRI捜査」を担うのが「第九」だ。近未来の日本を舞台に、特殊脳内捜査チームと彼らが追う事件現場を、美術監督の橋本創さんはどのようにつくりあげたのか?

登場人物たちが生きた歴史を感じられる場所に

警視庁のエリート集団である科学警察研究所法医第九研究室、通称・第九。発足時からの唯一のメンバーである室長の薪(生田斗真)をはじめ、青木(岡田将生)ら捜査官たちが「MRI捜査」を行う場所には、数多くのモニターが並んでいる。美術監督の橋本創さんがこのセットをつくるにあたり、大きなヒントになったのが、この外観を撮影した建物だった
「あるとき、制作部が会議室に使えるかもしれないと持ってきたのが、帝国ホテルなどで知られる建築家のフランク・ロイド・ライトの設計した武庫川女子大学(兵庫県西宮市)の甲子園会館でした。近未来の世界に、この建物のような歴史や様式美を入れていけたら重みがでるんじゃないかと思い、外観を決定し背景をCGで合成することにしました。

警察には第一から第九まであり、新設された部署の第九は手前の旧館を使っているという設定。後ろにあるのは、他部署が入っている新館。

第九の外観を撮影した武庫川女子大学の甲子園会館で
は、廊下のシーンも撮影。その廊下とつながるように
セットの廊下もデザインされた。

そこから、すでにデザインしていた中のセットにも、窓などの細かいところに、様式美を感じるディティールを落とし込んでいきました。突拍子もない設定ではあるので、普遍的なものと変わりゆくものを融合させて、できるだけ現実離れしないように、登場人物たちが生きている歴史を感じさせるような場所にできたらという思いで設計しています」

第九は発足して間もない部署。「配置している機械がむき出しの状態のものが多いのは、この部署自体がまだ実験段階であることを表現したかったから。正規稼働している製品であれば、普通はきれいなカバーがかかっているはずですから」

死んだ人間の脳内の記憶を映像化するMRIスキャナー
は原作にはない要素。橋本さんが一番悩んだのが「凶
悪犯の貝沼の脳を見たものは次々と死んでしまう」と
いう部分を映像で表現することだったそう。

300坪のスタジオいっぱいに建てられた第九のセットには、廊下からメインモニタールーム、MRIスキャナーのあるBMIルームがつくられている。「役者が芝居の導線を理解できるように、薪の室長室まで含めて建てたかったけど、とてもじゃないけど入りませんでした」

第九に課せられた使命は、家族3人を殺し死刑になった露口浩一(椎名桔平)の記憶を覗いて、行方不明になった長女・絹子(織田梨沙)を探し出すこと。殺人事件が起きた露口家は、小さな山の中にある、俗世間から離れた場所に建つ洋館だ。
「人を気持ち悪くさせるものってなんだろう?と考えて、家の中をちょっと違和感のある空間にしたかったんです。リビングの窓はサンルームをつくって二重にし、壁は面によって壁紙や色を変えて、切り取り方によっては別の場所に見えるようにしました。一見落ち着いているけど、どこかチグハグな空間。夢の中にいるような、不思議な感じに見えるといいなと思い、あえて統一しませんでした」

「2060年にはテレビが一家に一台ある時代ではないかもしれない」と、あえて家電を置かず、普遍的な要素として、アンティークの家具を配置。「脈々と受け継がれてきたものがそこに暮らす人物の格になる。そうして人間的な厚みを持たせることを考えました」

事件から3年。年月を経て朽ち果てた洋館は「生活しなくなった家」を実際にロケハンし、「リアルに変化させていった」。「どこから入ったか分からない落ち葉、壁には雨だれができている。全体的にエイジングをかけて、色を落としていきました」

事件の真相のカギを握る絹子の部屋は、「生と死を感じられる空間にしたかった」という橋本さん。「幼少期から、森の中で蝶や昆虫を捕まえては標本にする。摘んだ花を飾り、美しく朽ちていく姿を眺める。そういったもので、常に死と隣り合わせにある、絹子の精神性を表現したかったんです」

露口家の象徴として家の至る所にユリのモチーフが。壁紙も、ユリを模した絵が描かれた橋本のオリジナルデザイン。ファンシーになり過ぎないよう、ベッドの奥はコルクの壁にし、そこにも標本が刺せるように工夫されている。

絵画が趣味の祖母の部屋には、絹子が幼少期に描いた絵も。こういった装飾が、事件前は「普通の家庭」であったことをのぞかせる。

森に囲まれた2階建ての一軒家。玄関を入り、1階のリビングから、キッチン、祖母の部屋と、家の中をらせん状に見て回れる構造。2階に上がると突き当りに絹子の部屋がある。

映像カルチャーマガジン・ピクトアップ#101(2016年8月号 6月18日発売)
『秘密 THE TOP SECRET』の美術について、橋本さんのインタビューを掲載。
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プロフィール

橋本創

hashimoto sou
80年東京都生まれ。ゴンゾアート代表取締役。09年『クローズZEROⅡ』で美術監督デビュー。おもな作品に、『シュアリー・サムデイ』(10)、『ランウェイ☆ビート』(11)、『シャニダールの花』(13)、『クローズEXPLODE』(14)など。『るろうに剣心』シリーズ(12・14)、『プラチナデータ』(13)と、大友啓史監督作にも数多く参加している。近作に『HiGH & LOW』シリーズ(15-16)がある。
ムービー

『秘密 THE TOP SECRET』

監督/大友啓史 原作/清水玲子 脚本/高橋泉 大友啓史 / LEE SORK JUN KIM SUN MEE 出演/生田斗真 岡田将生 ほか 配給/松竹 (16/日本/148min) 特殊脳内捜査チーム「第九」は、室長・薪(生田)の指揮のもと、家族を殺した死刑囚・露口(椎名)の記憶をもとに行方不明の長女・絹子(織田)の捜索に乗り出す。しかし、その記憶の映像に映し出されたのは、刃物を振り上げる絹子の姿だった。8/6〜全国公開 © 2016「秘密 THE TOP SECRET」製作委員会
『秘密 THE TOP SECRET』公式HP
http://himitsu-movie.jp/
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