Room50  

2015.12.25

2DKに詰め込んだ夢と現実

蓮吾と大貴の共同生活

美術監督 相馬直樹

加藤シゲアキの小説デビュー作を、監督・行定勲、主演・中島裕翔で映画化した『ピンクとグレー』。幼馴染みの白木蓮吾と河田大貴は、渋谷で読者モデルとしてスカウトされたことをきっかけに、ともに芸能界を目指して上京。親友でありライバルであるふたりが共同生活を始める住まいを手掛けたのが美術監督の相馬直樹さん。夢を追いかける青年たちの暮らしをどのように表現したのだろうか?

70年代の雰囲気を活かした味のある空間づくり

幼馴染みの白木蓮吾と河田大貴が、上京してふたりで暮らすようになる部屋は、レトロなつくりが魅力の広めの2DK。「共同生活なので、ロケハンではいまどきのシェアハウスなども見に行きましたが、行定勲監督は味のある雰囲気が好きで、ちょっと70年代っぽい佇まいのこの部屋に決まりました」。リノリウムのような柄ものの床に、キッチンのタイルの壁、年季の入ったつくり付けの木の棚など、古くてもセンスを感じるインテリアが目を引く。

相馬さんによるイメージ画。候補のロケ地が決まると、行定監督の依頼で、飾った部屋のイメージを絵にして何パターンか見せたそう。

 

家具はヴィンテージではなく、リサイクルショップや道端で拾ってきたであろうものを揃えた。ものは多くてもきちんと片づけられた共有スペース。

 

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「男っぽくざっくばらんなところを残しつつも、幼馴染の女の子・サリーが出入りすることも意識して、少しカッコ良さを感じる空間にしています。引っ越して来たばかりの何もない状態から、ひとつずつ買い足していったと感じられるようにものを配置していきました。たとえば、ダイニングテーブルは架台に天板を乗せて、椅子もバラバラで揃えたりしています」 蓮吾と大貴の個性はそれぞれの部屋で表現した。「蓮吾はきちんと整理整頓派。逆に大貴はラフで、趣味のものを多く盛り込んで、色も多めに入れています。少し差をつけてお互いの距離感を感じられるようにしました」。
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ブルーを基調に必要最低限のものだけでまとめられた部屋。蓮吾は売れっ子だからか、時間をつぶせる趣味のものはほとんどない。

 

蓮吾とは違い、なかなか仕事がうまくいかない大貴の部屋は
もので溢れている。

その後、次第に蓮吾は有名になり別のマンションを借りることになる。「蓮吾がひとり暮らしする部屋は、四苦八苦して最後に決まりました。玄関を入って廊下を抜けたところに部屋があり、そこに窓から風がふわっと入ってくるという画をイメージしていたのですが、借りた場所が何もないワンルームだった。そこで、空間を仕切って廊下をつくることにしました」
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美大に通っているサリーの部屋は、女性のひとり暮らしにしてはちょっと広めの2DK。「絵を描いている女の子なので、アトリエもつくってかなり飾りこみました。行定監督イメージにあった芝居の流れに従ってこの場所に決まったのですが、実際撮影ではまったく違う芝居になりました。それはよくあることで、監督は現場で、役者さんがのめり込んで出し切ったときにふっと出てくる芝居を大事にされる。すごく映画を愛している監督なので、僕もその映画に呼んでいただけるのは、信頼されているんだなと思えてやりがいがあります」

サリーの部屋は行定監督の要望で、寝室とダイニングを仕切るビーズカーテンが取り付けられた。空間を完全にさえぎらないことで、奥行きのある過ごしやすい部屋に。

 

2DKながら共有スペースは広く、ダイニングに加えて小さなリビングスペースも確保。それぞれの部屋が収納を挟んでセパレートされているのも暮らしやすそう。

映像カルチャーマガジン・ピクトアップ#98(2016年2月号 12月18日発売) 『ピンクとグレー』の美術について、相馬さんのインタビューを掲載。
プロフィール

相馬直樹

soma naoki
64年北海道生まれ。映画、ドラマ、CM、MV、舞台など、さまざまな分野の美術監督として活躍。配信ドラマ『女たちは二度遊ぶ』(10)を皮切りに、『つやのよる ある愛に関わった、女たちの物語』(13)、『円卓 こっこ、ひと夏のイマジン』(14)などの行定監督作に参加。近作に、『脳内ポイズンベリー』『イニシエーション・ラブ』『天空の蜂』(すべて15)など。
ムービー

『ピンクとグレー』

監督/行定勲 原作/加藤シゲアキ 脚本/蓬莱竜太 行定勲 出演/中島裕翔 菅田将暉 夏帆 岸井ゆきの 宮崎美子 柳楽優弥 ほか 配給/アスミック・エース (16/日本/119min) 人気スターの白木蓮吾が自ら死を遂げた。第一発見者は親友の河田大貴だった――。ふたりは11歳のころから同じ団地で暮らした親友同士。6通の遺書を手にした大貴は一躍時の人となるが……。62分後に衝撃の仕掛けが観客を待ち受ける。1/9~全国公開 ©2016「ピンクとグレー」製作委員会
『ピンクとグレー』公式HP
https://promo.kadokawa.co.jp/pink-gray/news/
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