Room37  

2015.1.7

客たちの悲喜こもごもな人生模様が交差する

ネオンきらめく繁華街の路地裏にある小さな食堂

美術監督 原田満生

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シリーズ累計230万部、安倍夜郎による漫画『深夜食堂』がテレビドラマに続き、遂に映画化!! 監督は、映画『東京タワーオカンとボクと、時々、オトン』で日本アカデミー賞を受賞、ドラマシリーズ「深夜食堂」も手掛ける松岡錠司。ネオンきらめく繁華街の路地裏にある小さな食堂。夜も更けた頃に「めしや」と書かれた提灯に明かりが灯ることから、人は“深夜食堂”と呼ぶ。そんな「めしや」へ訪れる人々のお腹と心を満たすマスターの人柄を美術監督の原田さんはどのように表現していったのだろうか?

マスターの人柄が垣間みえるディテールにこだわった店内

東京・新宿の繁華街の片隅を切り取ったような路地裏にある“深夜食堂”こと、「めしや」。どこか懐かしく、昭和のニオイがするような街並みのセットは、埼玉県入間市にある広さ300坪の倉庫内に作られた。
「どこがモデルというわけではなく、自分が若い頃から飲み歩いて、記憶のどこかに残っている新宿や渋谷などの飲屋街をモデルにしました」 ドラマシリーズの第1部ではめしやの店内と店の前の通りだけのセットだったが、第2部では店の前の通りが抜けてその先にはT字路に。 「今回は、T字路のところに松岡監督と一緒にゴールデン街あたりを一緒に歩いて何気ない会話から生まれた交番が新しくできたりとさらにスケールアップしています」
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めしやの右向かいには「稲荷大明神」があり、きちんと油揚げが供えられている。

めしやの店内は誰もがちょっと懐かしさを感じずにはいられないつくりになっていて、ちょっとすすけた壁もリアルだ。「古臭いけど手入れはしっかり行き届いてるというマスターの気遣いが感じられるように作りました」狭い厨房の中も整理整頓され、カメラには映らない勝手口のほうにまで無線タクシーの電話番号の紙が貼ってあったり、ディテールにまでこだわり尽くしている。
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めしやの店内では、監督自身も客の1人のように椅子に座り、客目線になってキャストたちに演出をつけたんだそう。

映画では、原作はもちろんドラマシリーズでもこれまで描かれなかったマスターの日常生活をみることができる。初ロケは警視庁の遺失物センターに届けた骨壺を引き取りにいくというシーンだったのだが、作務衣姿しか見せたことのないマスターが初の私服を披露。 マスターの私服については、どんなものにするのかあれこれ意見が出て、マスター役の小林さんは「俺が着たいというものは却下されました。マスターはそんなものは着ないって(笑)。スタッフのこだわりが凄いんです」と語るほど。
マスターの自宅は店がある設定の新宿界隈で、抜けに新宿高層ビル群が入るようなところを条件に30軒ほどの物件を捜し、最終的に2軒に絞り監督が決定した。ちなみに選んだ物件は築40年のマンション2K(約30㎡)で家賃85,000円。男世帯らしく、ベランダも殺風景だが、古くてもこざっぱりしているなど、マスターの人柄が見て取れるような日常に作り上げている。また、店へと通う坂道を自転車で駆け上がったり、馴染みの八百屋で仕入れに出かけたりとドラマシリーズでは描かれなかったマスターの日常生活が垣間見える豊かなシーンが出来上がった。
「セットを作るときは、物語の世界観を広げるために何を提案していけばいいのかを考えます。単純にセットを広げて作りたいということではなく、原作にない部分を「そういう風になっていたんだな」と観ている人に思ってもらえるように意識してつくっています」
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めしやのある通りには「ニトロな夜」、「落とし処」などといった思わずニヤっとしてしまうネーミングの店が。これらの名づけ親は松岡監督なんだそう。

映像カルチャーマガジン・ピクトアップ#91(2015年2月号 12月18日発売)
『深夜食堂』に出てくるナポリタンのレシピを掲載。
プロフィール

原田満生

harada mitsuo
1965年生まれ。福岡県出身。『顔』、『ざわざわ下北沢』(00)にて、 毎日映画コンクール美術賞をはじめ、様々な賞を受賞。 さらに、『亡国のイージス』(05)、『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』(07)、『テルマエ・ロマエ』、『北のカナリアたち』(12)、『舟を編む』、『許されざる者』(13)で日本アカデミー賞優秀美術賞を受賞。公開待機作に、『バンクーバーの朝日』がある。
ムービー

『深夜食堂』

監督/松岡錠司 原作/安倍夜郎 出演/小林薫 高岡早紀 柄本時生 ほか 配給/東映
マスターの作る味と居心地の良さを求めて、夜な夜なにぎわうめしや。ある日、誰かが店に置き忘れた骨壺をめぐってマスターは思案顔。 詮索好きな常連たちは骨壺をネタに、いつもの与太話に花を咲かせている。そんなめしやに久しぶりに顔を出したたまこ。愛人を亡くしたばかりで新しいパトロンを物色中だったが、隣にいた年下の男と肌が合い…。 1/31〜全国公開 ©2015 安倍夜郎・小学館/映画「深夜食堂」製作委員会
『深夜食堂』公式HP
http://www.meshiya.tv/
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