Room22  

2013.10.4

原作の世界観に“憧れ感”を加えた空間

カンナと禄、それぞれの暮らしぶりが見える部屋

美術監督 新田隆之

長澤まさみと岡田将生主演で、いくえみ綾の人気漫画を初めて映像化した『潔く柔く』。過去の悲しい出来事から時間が止まっていたカンナ(長澤)と禄(岡田)が出会い、恋に落ちることで再生していく姿を描いたラブストーリー。ひとり暮らしをしているカンナと禄の部屋には、背伸びし過ぎないおしゃれさとリアリティが同居した空間が広がっています。漫画の世界観と現実が調和した部屋は、どのようにつくられたのでしょうか?
text by 小竹亜紀

インテリアのキーワードは“活版印刷機”と“IKEA”

部屋の一角に置いてある物から、禄が多趣味なことが推測できる。好奇心を必要とされる雑誌編集者という役どころを浮き彫りにする効果も。

ベッドカバーやカーテンなど、部屋の印象を決める大きな面積のものは、落ち着いたトーンで統一した。禄のベッドの頭上にある飾り棚は、ほかの部屋を繋ぐ出入り口をふさぐためにつくったもの。

禄とカンナの住まいに関する新城毅彦監督からのリクエストは、「ラブストーリーなので、年収や年齢といったキャラクター設定のリアリティを追求するより、憧れ感のある部屋にしたい」というものだった。
岡田将生演じる禄の部屋は、監督の“広くて古い物件”というイメージに基づき、リノベーション物件のような一室に決まった。「マンションの一室をアトリエとして使っている東京の下町の部屋を交渉して貸していただきました。東京の下町の物件で、隅田川やスカイツリーを臨むこともできます。部屋の真ん中には活版印刷機が置いてあるのですが、これは元々このアトリエにあったもので、動かすことができなかったんです。そこで、インテリアのひとつとして活かすことにしました。家具は室内の雰囲気に合わせて、アンティーク調でまとめています」。

すっきりと片付いているワークスペース。劇中にあまり登場しないスペースも、細かく装飾している。

一方、カンナの住まいのロケ地は、八王子にあるマンション。部屋のコンセプトは“身の丈にあったおしゃれ”。「置いてある雑貨や家具は、激安量販店ではなくIKEAで購入できるというイメージ。すべて装飾部さんに集めてもらいました」。テキスタイルのラグマットやクッションカバーなど、背伸びし過ぎていない、ほどよいおしゃれ感が、カンナらしさを表している。

禄の部屋とは対照的に、女性らしいカンナの部屋。ブラインドや収納家具を上手に使って、生活空間を仕切っている。

広い1LDKに家具を上手に配置した禄の部屋。クローゼットはないが、趣味のスペースなどをつくり見せる収納に。広いバルコニーから入る自然光が気持ち良い部屋。

映像カルチャーマガジン・ピクトアップ#85(10月18日発売)
『潔く柔く』の美術について、新田さんのインタビューを掲載。
プロフィール

新田隆之

nitta takayuki
63年北海道生まれ。大映スタジオの美術課などを経て、映画の美術助手としてフリーに。『実録・夜桜銀次』(01・成田裕介)で美術監督を務める。近年の作品に『ぱいかじ南海作戦』(12・細川徹)、『ロボジー』(12・矢口史靖)、『岳–ガク–』(12・片山修)、『RETURN(ハードバージョン)』(13・原田眞人)など。
ムービー

『潔く柔く きよくやわく』

監督/新城毅彦 原作/いくえみ綾 脚本/田中幸子 大島里美 出演/長澤まさみ 岡田将生 配給/東宝(13/日本/127min) 心に傷を抱えたまま大人になったカンナ(長澤)と禄(岡田)。ある日、行きつけのバーで偶然出会う。初めは反発していたふたりだが……。10/26~全国公開 (c)2013「潔く柔く」製作委員会 (c)いくえみ綾/集英社
『潔く柔く きよくやわく』公式HP
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