Room19  

2013.7.12

キャラクターの感性を活かしたカラフルな空間づくり

貧乏でも可愛く暮らす菜都美の部屋

美術監督 山下修侍

西原理恵子の自称的作品を映画化した『上京ものがたり』。2009年に公開された『女の子ものがたり』の前日譚的ストーリーの本作では、主人公・菜都美の大学時代が描かれている。東京での極貧生活にも負けず、美大に通いながら「絵の仕事をしたい」と頑張る日々。古い平屋で、菜都美の独特な色彩感覚を活かした空間はどのように作られたのか、美術監督の山下修侍さんに教えてもらいました。

古い和室が彩り豊かでアジアンチックな部屋に変身

美大に通うため田舎から上京した主人公・菜都美が暮らす家は、東京都東大和市周辺に建つ古い平屋の貸家で撮影された。『女の子ものがたり』(09)の菜都美が一軒家に住んでいたことから、今作でもその雰囲気とリンクさせようと選ばれた。 「『女の子ものがたり』のときに、まず登場人物のテーマカラーを決めました。菜都美は黄色だったので、今回も黄色のアイテムをいろんなところに散りばめています」。黄色をアクセントにしながら、古い和室をカラフルにコーディネイト。「色彩感覚が少し変わっていて、色の組み合わせが奇抜」というキャラクターが反映されている。

押し入れはふすまを外して、画材や資料を置く棚に。『女の子ものがたり』では、床の間に棚を設置していたことから、今作でも和室を活かした菜都美らしい収納の仕方を演出。

古くて汚れのあった壁にはアジア風の布を貼って目隠しに。
玄関へ続く扉には、コースターを規則的に貼って飾りを
付けるなど、女の子らしい細やかな工夫を演出。

「和室でなるべく浮かないものを考えて、インテリアはアジア風の色や小物を選びました。実は、照明のペンダントや木製の人形、グリーンやパープルのラグなどは『女の子ものがたり』でも使用したものなんです」。家具は貧乏な菜都美が拾って来たという設定。「古い木造の学校の職員室にありそうな引き出しや、藤のチェストなど、色はちょっと濃い茶系のもので揃えています」。
「室内のすべてが映っても大丈夫なように作りたい」という山下さんだからこその工夫が、浴室にも施されている。「追い炊きの古いタイプのお風呂で、壁とタイルの間に何か飾りたいなと思って、黄色い棚を付けました。人物の背景にも色を入れたくて、浴槽の後ろにナイロンのピンクのカーテンを入れたりして。映画を観ているときは全然気づかないかもしれないですけど(笑)」。

室内を彩るのは、アジアン雑貨の数々。これらは、吉祥寺のインテリア雑貨ショップで、スタッフが探して来たもの。竹素材の間接照明や、小さなちゃぶ台など、エスニックなインテリアがポイントに。

上京したての頃はお金が無く、作業スペースは絵を描くため
のイーゼルだけ。絵の仕事が少しずつ出来るようになって、
机を配置するなど、主人公の成長に合わせて変化をつけて
いる。

昔ながらの平屋の間取り。設備は古いながらも、DIYで可愛らしく装飾。庭に続く、小さな縁側が魅力的。隣接しているとなりの庭が丸見えにならない様、黄色い木製の塀を設置した。

映像カルチャーマガジン・ピクトアップ#83(2013年8月号 6月18日発売)
『上京ものがたり』の美術について、山下さんのインタビューを掲載。
プロフィール

山下修侍

yamashita shuji
66年長崎県生まれ。木村威夫氏との出会いをきっかけに、美術監督の道へ。ジョイアートに所属し、『キトキト!』『パッチギ!LOVE&PEACE』『きみの友だち』など多数の作品を手がける。現在はフリーランスとして、映画、ドラマのほか、トム・フーパー(『レ・ミゼラブル』など)が手がけるCMに参加するなど、幅広く活躍。
ムービー

『上京ものがたり』

監督・脚本/森岡利行 原作/西原理恵子 出演/北乃きい 池松壮亮 ほか 配給/ファントム・フィルム(12/日本/109min) 美大に通うために上京した菜都美(北乃)。しかし、憧れの東京暮らしは極貧でバイトに明け暮れる毎日。そんな中、ある日バイト先で亮介(池松)と出会い、一緒に暮らし始める。しかし亮介は定職につかず、生活は苦しくなるばかりだった……。8/24〜シネマライズほか全国公開 (c)2012西原理恵子・小学館/『上京ものがたり』製作委員会
『上京ものがたり』公式HP
https://twitter.com/jyokyomovie
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