Room18  

2013.6.7

恋人同士の距離感がわかる空間づくり

ふたりの個性が活かされた部屋

美術監督 丸尾知行

中村航の同名小説を映画化した『100回泣くこと』。バイク事故で恋人の記憶を失った主人公・藤井と、病魔に侵された元恋人・佳美との切ない恋模様が描かれている。ふたりが暮らし始めるのは藤井が住んでいた家。部屋の装飾を変化させることで、ふたりの関係性がわかる空間になっている。恋人同士の距離間が読み取れる部屋づくりについて、美術監督の丸尾知行さんに教えてもらいました。
text by 小竹亜紀

恋人同士の仲のよさが測れる、温かみのある部屋

グレーの壁が特徴的な藤井の家は、米軍ハウスのようなおしゃれな雰囲気が漂う。宮城県白石市にある市営住宅の一軒を借りて撮影された。空間の見せ方にこだわりを持つ廣木隆一監督はもちろん、美術監督の丸尾さんも認めた物件だ。 「藤井の部屋は、飾り気がないけど、整理整頓されていてシンプル。彼の几帳面な性格を反映させています。無印良品で買った収納箱などを使い、ダークトーンにまとめて男性らしい印象にしました。棚に飾ったロボットは、金属関係の工場に勤めている、機械好きであろう藤井が趣味で作ったというイメージです」。
藤井が恋人の佳美とこの家で暮らし始めると、部屋の印象は一変する。 「テキスタイルデザイナーである佳美と生活するようになってからは、部屋に色を足したり、布を飾ったり、彼女の趣味を反映させて華やかな印象の部屋にしました。ロボットもかわいらしく装飾して。また、大病を患っている佳美が頑張って生きている姿を見せるために、ミシンを置いた作業スペースを作ったりして、諦めず生きようとする証を表現したつもりです」。
白を基調にしたシンプルな壁に、一見バラバラな印象のテキスタイルを上手に使い女性らしい統一感を出している。布をポイントにアクセサリーを飾るテクニックからは、佳美のデザイナーとしてのセンスを垣間見ることができる
藤井はバイクが趣味ということもあって、玄関先の広いデッキが映画でも活きている。ダイニングキッチンからリビングにかけて大きな窓もあり採光がよく、日差しの気持ちよい間取りになっている
映像カルチャーマガジン・ピクトアップ#83(2013年6月18日発売)
『100回泣くこと』の美術について、丸尾さんのインタビューを掲載。
プロフィール

丸尾知行

tomoyuki maruo
53年生まれ。『祭りの準備』(75)で美術助手として映画界入り。ATG、円谷プロを経て独立し、美術監督として、高橋伴明監督、黒沢清監督らの作品を手掛ける。『きいろいゾウ』『だいじょうぶ3組』(ともに13)など、廣木隆一監督作品にも数多く携わっている。近作に『脳男』(13)など。『爆心 長崎の空』が7月公開。
ムービー

『100回泣くこと』

監督/廣木隆一 原作/中村航 脚本/高橋泉 出演/大倉忠義 桐谷美玲 ともさかりえ ほか 配給/ショウゲート(13/日本/116min) 事故で恋人の記憶を失った藤井(大倉)は、かつての恋人・佳美(桐谷)と再会を果たす。恋人だった佳美を忘れてしまった藤井は、自然に佳美に惹かれ、交際を申し込む。佳美は真実を明かさず、ふたりは再び付き合い始めるが……。6/22~全国公開(c)2013中村航・小学館/ 「100回泣くこと」製作委員会
『100回泣くこと』公式HP
https://twitter.com/100kai_movie
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