Room16  

2013.4.12

個性が散りばめられたアートな住まい

人が集まりたくなる、温かく居心地の良い場所

美術監督 相馬直樹

実話を元にした、劇団・東京セレソンデラックスの伝説の舞台『くちづけ』。それを観て感動したという堤幸彦監督により映画化されたのが本作。知的障害者たちが生活するグループホーム“ひまわり荘”を舞台に、胸を揺さぶる親子愛を描く。画家のアトリエだったという設定で建てられた、大きな一軒家のセット。住人たちの個性が活かされた快適な共同空間づくりのコツを、美術監督の相馬直樹さんに教えてもらいました。
text by小竹亜紀

住民たちの個性が活きる、アーティスティックで味のある談話室

“ひまわり荘”は大きな一軒家で、スタジオに建てられたセット。物語はこの家を舞台にワンシチュエーションで進んでいく。「常に5台のカメラを使い、長回しで撮りました。そのため、芝居する空間を広く取り、カメラやスタッフが隠れる場所を作るなど、余裕のある配置にしています」。談話室を中心に、2階の住人の部屋へ続く階段を設置。階段の途中にスペースをつくった事で高低差が出来、撮影カットにもバリエーションを生んでいる。
ひまわり荘は、もともと画家のアトリエだったという設定。「堤監督の案です。『見た目は古いけど、おしゃれな洋館』をイメージしています」。 「共同スペースは、住人の個性を反映させると、温かみのある素敵な空間になる」。談話室の壁には、写真好きな住人が撮った作品などがオシャレにレイアウトされている。「写真や絵は、住人が貼ったというイメージでレイアウトしています。雑多に見えるのは、きっちり貼った人もいれば、指示されたとおりに貼った人もいるだろうと、キャラクターの個性を考えながら貼ったためです。実際には配置のバランスを考えてレイアウトしています。その辺りのバランス感覚は、長年培ってきた経験を元に感覚に頼る部分が大きいですね」。家具はおしゃれなアンティーク調。「センスが良かったであろう前住人が置いていった家具を、そのまま使っているというイメージなんです。談話室の家具がバラバラなのは、住人が持ち寄った家具もあるという設定です」。
セットにも関わらず、風や四季の移ろいを感じられるのも特徴だ。「扇風機を使って、風がそよいでいるような感じを作ったり、照明の光の加減で四季を表現したりしています。そのために窓もたくさん設置しました」。
カラフルな天窓は、ホー ムセンターなどで量販しているカラーフィルムに、マジックなどで、鳩や幾何学模様を足して、ステンドグラスのような雰囲気を 出している。
トイレは丸いタイルに色 を塗って装飾。水場なので「天井の塗装がはげてペロンとしている」など、小さな工夫がリアルな空間を作りあげている。
1階は談話室を中心に、庭、ダイニング、キッチンと繋がる間取りに、愛情いっぽんの作業部屋、トイレを設置。2階は住人たちの個室が何室かある。
映像カルチャーマガジン・ピクトアップ#82(2013年6月号 4月18日発売)
『くちづけ』の美術について、相馬さんのインタビューを掲載。
プロフィール

相馬直樹

soma naoki
64年北海道生まれ。東宝特撮で美術助手を経験後、池谷仙克氏に師事。その後、フリーとなり、映画、ドラマ、CM、MV、舞台など、さまざまな分野の美術監督として活躍。近作に『荒川アンダー ザ ブリッジ』『エイトレンジャー』(ともに12)、『つやのよる ある愛に関わった、女たちの物語』(13)。
ムービー

『くちづけ』

監督/堤幸彦 原作・脚本/宅間孝行 出演/貫地谷しほり 竹中直人 宅間孝行 ほか 配給/東映 (13/日本/123min) 知的障害者たちが生活するグループホーム「ひまわり荘」に、漫画家・愛情いっぽん(竹中)と、娘・マコ(貫地谷)がやって来る。そこには、いつもテンションの高い、うーやん(宅間)など、個性豊かな住民が暮らしていて……。5/25~全国公開 (c)2013『くちづけ』製作委員会
『くちづけ』公式HP
https://twitter.com/kuchizukemovie1
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