Room15  

2013.3.8

恋人から家族へ。関係とともに変化する空間

“貧乏芸人”甲本と久美の仲睦まじさ溢れる部屋

美術監督 津留啓亮

ウッチャンナンチャンの内村光良が七年ぶりにメガホンをとった『ボクたちの交換日記』。人気のないお笑いコンビ“房総スイマーズ”が今度こそ売れよう!と交換日記を始める。自らの人生と重なる題材だけあって、監督の思い入れもたっぷりのこの作品。主人公のひとり、小出恵介さん演じる芸人の甲本と彼を支える長澤まさみさん演じる恋人・久美。決して裕福ではないけれど二人の思いが詰まった部屋はどのようにつくられたのか、美術監督の津留啓亮さんに語ってもらいました。
text by 釣木文恵

二人の好みがブレンドされていく、温かみある部屋

売れないお笑いコンビの田中と甲本の部屋があるのは、内村光良監督も思い入れのある街・三軒茶屋という設定。お調子者の甲本は、恋人の久美の部屋に転がり込んで暮らしている。
「一人暮らしの田中の部屋が寂しげな蛍光灯の照明なのに対し、甲本と久美の部屋はやわらかな電球色の照明に。全体的なトーンも女性らしいオレンジ色で統一、温かみのある部屋づくりをしています。まずは女性の部屋をつくり、甲本が来たことで次第に男性らしいアイテムを加えていったところが工夫です」
時間の経過に合わせ、落ち着いた色のソファやモノトーン、寒色系のクッションなどを部屋に。次第に男性らしさも交え、「二人の部屋」へと変化させている。
壁にかけられた花柄のファブリックボードはIKEAのもの。手の届く範囲で簡素な暮らしに華やかさを加えているのも特徴。女性らしさは家具や家電の配置にも表れている。 「冷蔵庫の上に電子レンジは置かない(水の気を持つ冷蔵庫の上に、相反する火の気を持つ電子レンジを置くと運気が下がるともいわれている)など、風水を多少取り入れています。部屋のインテリアで占いや風水を気にする女性は少なくないでしょう?」
物語の途中で甲本と久美の間には子どもが生まれる。それに伴って引っ越す設定だったところを、「この家庭にそれほど余裕もないだろうというリアリティを尊重」。そのままの部屋でまた新たな暮らしをつくっていったそう。 「久美はものを大切にするしっかり者。だから三人家族になったからといって、家具や家電を買い替えることはほとんどなく、同じ場所に子どものものだけが増えていくというように、自然な変化を表現しました」
交換日記をやりとりするポストは重要な場所。だからこそ部屋とは別のロケ地を探した。「ポストとそこを覗く甲本がうまくフレームに入る場所を選びました」
決して広くはないが、リビングと寝室が分かれている1DKの間取り。久美の目線と重ね合わせ、寝室側からテレビを見つめる甲本の表情をうまく捉えることができた。
映像カルチャーマガジン・ピクトアップ#81(2013年4月号 2月18日発売)
『ボクたちの交換日記』の美術について、津留さんのインタビューを掲載。

プロフィール

津留啓亮

tsuru keisuke
福岡県生まれ。フジアールにてチーフ・アート・プロデューサーとして様々な映画やテレビの美術を手掛ける。ドラマ『アンフェア』『バチスタ』シリーズをはじめ『リーガル・ハイ』、映画『ピーナッツ』(06)、『BABY BABY BABY!』(09)、『ヒーローショー』(10)、『MY HOUSE』(12)、『ばななとグローブとジンベエザメ』(13)など作品多数。
ムービー

『ボクたちの交換日記』

ボクたちの交換日記 監督・脚本/内村光良 原作/鈴木おさむ 出演/伊藤淳史 小出恵介・長澤まさみ ほか 配給/ショウゲート(13/日本/115min) 高校の同級生でお笑いコンビ・房総スイマーズを結成した田中(伊藤)と甲本(小出)。鳴かず飛ばずのまま12年経ち、現状を打開するために交換日記を始める。そこに、大きなお笑いコンテストの話が転がり込むが……。3/23~全国順次公開 ©2013「ボクたちの交換日記」製作委員会
『ボクたちの交換日記』公式HP
https://twitter.com/koukan_nikki
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